poco a poco.

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幹彦の場合。 ー おまけつき ー 

咲子の場合。

奈美恵の場合。

紀夫の場合。

ニャンタマの場合


「わたし、スペイン旅行に誘われているの」
 夕食も終わりかけたとき、妻の咲子が突然そう言った。スペイン。彼女は確かにそう言った。ここ数週間、俺の頭の中から一日たりとも消えたことのない国の名前を、他の誰でもない咲子が口にしたのである。
 彼女が同窓会に出席するために東北へ1泊2日の旅行に出掛けたあと、俺はなんだか大変だった。大変だったとは言っても、実際のところ何も起きてない。起きてないから今こんなに動揺するのかも知れないし、起きていたら椅子からずり落ちていたかも知れない。

ニャーゴ。

 俺の心を見透かしたように、ニャンゴロウがすり寄ってきた。足元を見ると、少し細まった目がこちらを見ていた。

長文故、クリックは用事を済ませてから↓



「幹彦さん驚きましたねえ。まさかお母さんがスペインに行きたいと言い出すなんて。大丈夫、わたしは何も言いませんよ、同じ男同士じゃないですか、ご安心ください」
 ニャンゴロウの目がそう語りかけてきているように見えた。

 俺は冷静を装いつつ内心は狼狽えながら、ビールの肴に残しておいたマグロの刺身をニャンゴロウの鼻先に近づけた。
 ニャンゴロウは両手でそれをキャッチすると、俺の足元でチャッチャッと音を立てて咀嚼しはじめた。
「もう、またニャンゴロウに何かあげたでしょう?だめよ、ダイエット中なんだから」
 咲子が小言を言った。
 俺だって5キロも体重のある猫に大事なマグロをくれてやりたくない。
 背に腹は替えられないのだ。

 咲子は猫のニャンゴロウと会話ができると言っているし、事実咲子とニャンゴロウは意思の疎通ができている。もしニャンゴロウが咲子の留守中に起きたことを話してしまったら、もう俺はおしまいだった。
 いや起きそうだっただけで、まだ何も起きてない。何もないと言ったら嘘になるのか。むむむ。

 3年前に独立して、自宅でグラフィックデザインの仕事を始めた。大手広告代理店で仕事をしていた頃に比べると、収入は減ったままだし、咲子が嫌な顔をしないのをいいことに雑用を押しつけるようになっていた。
 家事も娘の由香里の世話も咲子がほとんどやっているし、その上彼女は友人の紹介で週に2日パートに出るようにもなっていた。

「もっと忙しくなったらわたしはお払い箱ね。プロにお願いしなくちゃ、わたしには手に負えなくなるわ」

 帳簿を付けながら、彼女は笑った。
 俺は彼女の楽観的な性格に救われていたし、甘えすぎてもいた。

 いい仕事が取れるときもあれば、ことごとくコンペで負けることもあった。
 波のある日々をできるだけ平穏に過ごそうと思い、久しぶりに写真をはじめた。
 インターネットで写真のことを検索していると、いくつかの写真ブログを見つけた。最初は見ているだけで十分面白かったが、自分も見様見真似でやり始めてみた。
 どこにでもある風景写真しか撮れなかったし、文章も並程度だったが、徐々にそれに感想を書き込んでくれる人も出てきた。
 現実社会にあるのかないのかよく分からない世界で、自分の何かが広がりつつあることに躊躇する気持ちもあったが、その世界は意外と人間臭く、温かささえ感じることがあった。
 デザインに煮詰まったり、やりたくない仕事を引き受けざるおえなくなったとき、写真を撮っていると頭の中がリセットできたし、ブログに記事を書いているとざわついた胸の中が安定した。
 俺の日常は、家族と仕事と写真の不思議な歯車が噛み合い、ゆっくりと流れていた。


 それは先月のことだった。商店街の写真を載せた記事に見慣れないハンドルネームでコメントが入っていた。

『懐かしい。このたい焼き屋さんの向こうにマンガをたくさん置いている喫茶店がありましたね。まだやっているのでしょうか。Kyuko』


<一旦休憩>
休憩猫1




 この辺りに住んでいた人だろうか。
 俺は嬉しくて返事を書こうとした。そして、そのとき気が付いたのだ。 
 kyuko?キュウコ?
 俺はある確信を持って、返事を書いた。

『kyukoさん、あのキュウコさんですか?』

 次に返ってきたのはブログ管理者、つまり俺にしか見えないコメントだった。

『ピンポン♪あの弓子よ。2週間後に日本に帰るの。今はスペインで娘と暮らしているの。連絡先を教えて。わたしの電話番号よ。×××ー×××ー××××』
 
 キュウコが指定した日は、幸か不幸か咲子のいない日だった。待ち合わせの場所に車で迎えに行くことになったが、ニャンゴロウが連れて行けとうるさいので後部座席に乗せた。

「すまないね、瘤付きで」
「いいのよ。猫は嫌いじゃないわ」

 彼女は変わらず美しかった。彼女の美しさは動物的だ。男に好かれそうでいて、敬遠されそうな面もあるような気もした。
 キュウコが後部座席に振り向くと丸くなったニャンゴロウは片目だけを開いてキュウコと俺を見た。そして大きな鼻息を漏らして目をつぶった。

「ね、今日は友達の家を借りてるの。家に来て一緒にご飯を食べない?」

 もちろん猫さんも一緒でいいわ。キュウコはそう言った。
 俺は返事をはぐらかして、とりあえず家まで送ると言った。咲子のいない間に彼女を裏切るようなことはしたくはなかった。彼女を失っては俺は生きていけないのだから。
 マンションの前に車を停め、ニャンゴロウはそのままにして彼女をマンションまで送った。
 マンションの前で彼女の荷物を手渡し、それじゃあと言い出そうとしたとき、彼女に部屋の中に引き込まれた。暗い玄関で抱き合い、俺たちはキスをした。15年前の夏の記憶が鮮明に蘇っていた。エアコンのない俺の部屋で、俺は彼女と一度だけ関係をもったことがあった。
 俺は恐くなり、彼女から体を離そうとした。
「お願い。今日だけでいいのよ」
 彼女はもう一度体をすり寄せてきた。
 今日だけ?そうか、今日だけか。咲子の顔が一瞬頭をかすめたが、俺は彼女の肩をもう一度抱き寄せようとした、そのときだった。

ブーーーーーー!!

 静かな町に車のクラクションが鳴り響いた。



「ねえ、やっぱり駄目かしら?」
 ぼんやりとしていて、咲子の話はほとんど聞いていなかった。どうやら女友達に誘われているらしい。
「いいんじゃないの」
 咲子は大喜びで早速友達に電話をかけ始めている。
 俺の財布の中には、キュウコがくれたスペインの住所と電話番号が書かれた紙が小さく折り畳んで入っている。

 スペインで会いましょう。キュウコはそう言った。

 電話で話す咲子を見つめた。咲子のうなじが気のせいかピンク色に染まっているように見えた。
 咲子は俺の視線に気が付くと、ほんの一瞬だけ目を反らした。
 そしてまた満面の笑みをつくり、友達と話を続けた。
 俺は、キュウコの感触を思い出していた。




おまけ、
ニャンゴロウの場合。

 あの日、目が覚めるとお父さんと見知らぬ女性の姿がなかった。
 なんだか不思議な夢を見た。白い建物の屋上で、彼女は蝉を追いかけて遊んでいた。ボクに気が付くとにゃおーん。と、色っぽい声で彼女は鳴いた。
 ボクは誘われているのだと思って彼女に近づくと、さっきとは違う凶悪な顔で怒られた。おでこに当たった猫パンチは強烈だったけど、怒った顔も素敵だった。
 ボクは彼女と仲良くなりたくて、にゃおーんと鳴いた。彼女はボクを見ていたけど、鳴き返してはくれなかった。にゃおーん、にゃおーんと鳴いているうちに目が覚めてしまった。

 あんな女の子には会ったことがなかった。でもどこかで見たことのある顔だった。
 そうだ、お父さんの関西の友達が持ってくるお酒の瓶にそっくりなのだ。ボクはお父さんに関西というところに連れて行ってもらおうと、運転席に飛び移った。そしてお父さんを探そうとハンドルに前足をかけると、すごく大きな音が鳴りはじめた。

 あれから何度もお願いしているのに、お父さんは関西に連れて行ってくれない。まったく、話の分からない人だ。



おことわり。
マイおばちゃんの日記 さんの記事の続きを
barramedaさん が書かれたのを見て、
わたくしrorieが勝手に触発されて書きました。

maiさんの中に幹彦ストーリーがすでに出来上がっていたかもわからず、大変不躾なことをしてしまったなあと思っております。

これにより心的ストレスを受けた方がいらしたら、全てわたくしrorieの責任です。

あー、楽しかった。
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[ 2008/03/15 17:05 ] story | TB(0) | CM(6)
なぬー、幹彦はキュウコと、そして必ず咲子は宇名木と!!
それに、にゃんたま先生にも恋人が!?

全米が泣く、二転三転のストーリー!ははは。

小学校の時とか友達とやらなかった?
「どこで」「だれが」「だれと」「なにをした」ってのを、それぞれ書いて、後でつなげて読んで、その意外性に爆笑する遊び。

なんか面白いね、こういうの!







[ 2008/03/16 00:51 ] mai [ 編集 ]
意外な展開になりつつも、かなり面白い!これってちゃんと組み立てて書いたら完成度高いよなぁ、組み立ててないから良いんだけどね。

このまま行くと現実との境目が分からなくなって全米が泣きそう!
[ 2008/03/16 04:14 ] barrameda [ 編集 ]
maiさん、ほんまに勝手なことしてごめんなさい。
咲子も幹彦もmaiさんの中では全然違う人物像じゃなかろうかと
思っています。
もう一つのストーリー、いやほんまのストーリー、
気が向いたら書いてくだっさい!

全米泣きますか?どこで泣きますか?
わたし、タイタニックのどこで泣けばいいか分からなかったです!

それにしても、小学校のときにそんな遊びしてたんですか?
さすがっす。
[ 2008/03/16 12:29 ] rorie [ 編集 ]
barramedaさん、面白いですね。
maiさんの3話とbarramedaさんの番外編を読んでいたら、
どーしても書きたくなってしまいました。

続けて読むと本当に面白かった。
書く方は楽しかったです。

全米泣かせますか?ニャンタマの本命が見つかる日まで〜(笑)
[ 2008/03/16 12:41 ] rorie [ 編集 ]
や~、いいな~。
おもしろ~い。
maiさんのんすげーはまって、ひきこまれるように読んでたんだけど、この2つの番外編もおもろいわ~。
まじで、すげ~、おもしろかった~。
まだまだ続かないかな~。
[ 2008/03/16 16:21 ] えりんぎぃ [ 編集 ]
えりんぎぃ、
maiさんの三部がしっかりしてるからね、
あとで続ける方はすごく楽なのさ。
すべて自由だと迷いがでるけど、
maiさんのところからできるだけ離れてみて
これくらいだなあと思ったよ。

わたしが思うに、咲子は・・むにゃらにゃら。

さあ、さあ、6話目は誰が書くのら〜。
[ 2008/03/17 21:44 ] rorie [ 編集 ]
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