poco a poco.

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海の闇。 

わたしは泳げない。

それなのに、海の中から海面を見ている。

暗い海の底に背を向けて、
太陽の光が波に散らされて降り注いでくるのを、
ただ目を懲らして見つめている。

体はゆっくりと、とてもゆっくりと海面から遠ざかっていく。
光は少しずつ弱まり、波が届けていた煌めきを奪っていく。

わたしは泳げない。

それなのに、わたしの中に感情はない。
ただ自然の力に任せて、光の世界から離れていく。
焦りや苦しさや淋しさや怯えから解放されているのだ。

海面を遠ざかるにつれて海底は近づいているはずなのに、
その気配は、ない。
海底は、遠いのだ。ものすごく、遠いのだ。

やがて、あたりは薄暗くなる。
わたしは手のひらを掲げた。

青光りするその手のひらが、わたしに向かって手を振る。

何かが始まってしまったことに、
わたしは気がつく。

わたしは泳げない。

それなのに、わたしは泳ぎはじめる。
わたしは体をくねらせて海の底を眺める。
そして、下手くそな手搔きとバタ足で、
海の闇へと進み始める。

ほんの少しスピードを上げて、
それでも悲しくなるほどゆっくりと。
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[ 2007/05/21 10:24 ] practice | TB(0) | CM(0)
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